研究部からのひとこと

2017.03.08 めちゃぶりの醍醐味(荒木浩教授)

 2010年、日文研に赴任してまもなく、宮澤賢治をめぐる共同研究に参加した。かつてインドで知見を得た教授のお誘いだ。賢治は苦手。発表の手掛かりもつかめず困り果て、急がば回れと、古典研究で読み馴れた短歌や詩を読んでみた。すると、月がのどを鳴らして光りを吞んだり、果実のような匂いを放ったり、不思議な形象に目が留まる。図録には、賢治が描いた目鼻のある印象的な月の絵も載っていた。花王石鹸みたいだと単純な私は思い、後追いをすると、日文研の図書館には、数種類の花王石鹸の社史と、近代広告史の資料集が揃っていた。どっさりと関連資料が浮び上がる。その脈絡は、いつしか宮澤賢治の愛した赤い経巻(島地大等『漢和対照法華経』)付載の「法華歌集」ともシンクロした。『法華経』なら私の専門分野の重要文献だ。資料もずいぶん持っている。いつしか関連論文が何本も出来た。日文研に来なければ、絶対に生まれなかった研究だ。日本以外に、チェコ、インド、アメリカ、ブルガリアで発表した。アメリカが一番受けたかな。もっとも、私の宮澤賢治研究は、日本の専門家にはほとんど知られず、好まれていない。その孤立感もまた、日文研の醍醐味?である。

 

荒木浩教授 紹介ページ
http://research.nichibun.ac.jp/ja/researcher/staff/s005/index.html