研究部からのひとこと

2017.03.22 20世紀末ごろの日文研 3(石川肇助教)

前回のお話

 今なら圧迫面接と言われそうだが、そうではない。これは「このくらいの試練に耐えられないようなら入ってもすぐに辞める羽目に陥り、研究者としてのキャリアに傷がついてしまう。そうなる前に違う道を選択したほうが良い」というS教授の優しさであり、それはその後の付き合いのなかで理解できた。しかしながら当時のわたしにそんな優しさがわかるわけもなく、耳の上から汗が噴き出した。そして不運、絶望、不合格といったマイナス用語が次々と頭に浮かんだ、が、それらを振り払いつつ考えた。体感的には0.1秒。その時の思考はこうだ。《鈴木先生の悪口なんて考えたことなかったぞ…。だけどすぐに答えなければ間違いなく落ちる。さてどうしたものか。みんな口元が笑っている…、狂ってるのか? 人格的悪口は論外として研究的悪口も本人を目の前にどうしたものか…。的外れなことを言っても不合格だろう、よし、長所に悪口を織り交ぜながら中和させ、この場をなんとか乗り切ろう!》

わたし「鈴木先生の新しい文学史の構築は古代から現代までを俯瞰したもので、細やかな研究成果を下敷きにした、従来研究を覆すような刺激的なものと思っております。しかし、その下敷きとなっている部分が表に出てこないので、一体どうしてそういう結論に達したのかが今一つわかりません。ですので、そうした下敷きを目に見える論文として世に出していただければと思っております」
S教授「ん? ん~~~。なんだか答えになっているような、なっていないような答えだけど、まあ、いいでしょう。ふふふ、頑張ってください」
わたし「ありがとうございます」

 当然のことながら、わたしの「誤魔化し」はバレていたわけだが、それを笑って許容してくれるところが羅漢の羅漢たる所以なのだ(おわり)。

 

石川肇助教 紹介ページ
http://research.nichibun.ac.jp/ja/researcher/staff/s409/index.html