研究部からのひとこと

2017.07.26 書評をしなくなった?研究者(松田利彦教授)

 旧知の韓国人研究者がこんなことを書いていた。朝鮮近代史の分野で2008年から2009年にかけて発表された書評は20余篇だが、これは200篇を超えるこの間の論著に対する書評としては量的にあまりに貧弱だ、と(許英蘭「2008~2009年度日帝植民地時期研究の現況と課題」『歴史学報』第207輯、2010年。原文韓国語)。

 私の専門とする朝鮮近代史・日朝関係史について言えば、たしかにそのような傾向は感じる。研究会で書評をしてくれる研究者を捜すのが困難で、とりわけ分厚い本の書評は敬遠されたりするとも聞く。私の大学時代の恩師の松尾尊兊先生は、研究者として職を得たら毎年論文1本、書評1本は書くようにとおっしゃられ、私は今もそれを守っているのだが。書評をすることで自らの立ち位置を確かめ、さらには多くの人に研究の潮流を説明できる力を身につけよということだったのではないかと思っている。

 たしかに書評を書いても業績にはカウントされないのが普通なので、書いても仕方がないという考え方もあるだろう。書評が書かれなくなったのは悪しき成果主義の弊害だという見方はうがちすぎだろうか。

 

松田利彦教授 紹介ページ
http://research.nichibun.ac.jp/ja/researcher/staff/s026/index.html