研究部からのひとこと

2017.08.23 10年後に数えてみた「初めて」の出来事(チャン・ティ・チュン・トアン外国人研究員)

 日文研が20周年を迎える2006年に、私はベトナムからの三人目の外国人研究員として日文研に来ました。そして30周年を迎える2016年、また同じ資格で再来することができました。感謝の気持ちを込めてお祝いの言葉を申し上げますと共に、この10年間、日文研からの発信を受け止めてきた身近な「初めて」の出来事を数えあげてみたいと思います。

 私は日文研からベトナムに帰った翌年、2008年にハノイ大学において日本語学部創設35周年記念として第一回日本研究国際シンポジウムを開きました。「日本語教育を踏まえた日本研究への道」の通り、これがベトナムの日本語教育において初めての日本研究の国際シンポジウムでした。当時、日文研からは白幡洋三郎先生、小松和彦先生、山田奨治先生をはじめ、多くの先生方が来られ、シンポジウムの基調講演、研究発表、総括会、そして、各分科会の司会、他の発表者へのコメンテーター等、たいへんご尽力いただき、シンポジウムは大成功でした。また、その後の論文集の編集についても日文研の20周年の論文集に大いに学びました。これらは私たちハノイ大学の日本研究において画期的な出来事であり、日本研究の歴史が浅い途上国のベトナムに対しても貴重なご支援となりました。

 この第一回国際シンポジウムからハノイ大学の日本研究が軌道に乗り、2010年には日本語学部に大学院が設置され、2013年には第二回日本研究国際シンポジウムが開催され、この時にも日文研の先生方から様々なご支援をいただきました。このようにベトナムの日本研究が自立して行く過程において、日文研からの協力は欠かせない要素となっています。

 私個人としましても、前回は早川聞多先生の変体仮名講座を通して『百人一首』に、そして今回は荒木浩先生の中世文学講読を通して『徒然草』に出会い、これらの作品をベトナム語に翻訳することもできました。古典文学作品をベトナムの人々に紹介できることを誇りに思うと共に私自身の日本文化に対する視野を広げられたことも研究者としては嬉しいことです。特にベトナムの日本語教育のトップに数えられるハノイ大学だけでなく、私立大学であるFPT大学やタンロン大学等の日本文語学部のカリキュラムにもこれらの作品の講読が取り入れられ、ベトナムの学生に対して初めて日本の古典文学の作品や作家に接してもらえるようになりました。

 この10年間、外国人研究員だけでなく、外来研究員としても、ベトナムからの研究者が徐々に多くなっています。我々は日文研で日々磨いたそれぞれの研究以外にも、共同研究会に参加して、受け入れ教員や他の日文研の先生方、更には日文研で出会った世界各地の研究者など、皆さんから学んだ様々な知識や研究ノウハウを身につけて、日文研からの日本文化研究の発信の輪をベトナムだけでなく世界中に広げていくように努力しています。

 幾重にも日文研への感謝を込めて30周年の節目を迎えられたことをお祝い申し上げます。

 

チャン・ティ・チュン・トアン外国人研究員/ハノイ大学准教授 紹介ページ
http://research.nichibun.ac.jp/ja/researcher/staff/s443/index.html