研究部からのひとこと

2017.10.18 ヴェネチアのワークショップに参加して(安井眞奈美教授)

 2017年4月に日文研に赴任し、9月に初めての公務でヴェネチアを訪れた。ヴェネチア大学と日文研のワークショップ「江戸の妖怪文化―信仰と娯楽のはざまで」に参加するためである。わたしはこれまで、出産や身体、妖怪などの研究を続けてきたので、ワークショップでは産死者の妖怪「うぶめ」について、画像を紹介しながら日本語で発表した。会場は満席で、イタリア日本研究学会の会員やヴェネチア大学のスタッフ、学生、院生の方々による流暢な日本語の質問が飛び交い、日本文化に対する関心の高さが印象深かった。イタリアでは、日本は「漫画・アニメ」「浮世絵」「極東の島」というイメージとともに人気が高く、日本研究を希望する学生が増えていると聞いた。研究のレベルでも、彼らの興味を惹きつけていくことが、日本研究を進める鍵になるのだろう。

 ところで、日文研に赴任する以前の日文研の印象は、海外の日本研究者にとってきわめて恵まれた研究環境である、というものだ。日文研に滞在している外国人研究者の方々と話しをすれば、口をそろえて「すばらしい研究機関で幸せです」とか「帰国したら、この成果をもとに本を書きます」と、おおいに満足されていた。これは、日本研究を専門とする外国人研究者を支援する、日文研の役割の一つが十二分に発揮されてきた証であろう。

 しかし、日本の人文・社会科学の現状をかえりみると、日本研究の海外への発信という点については、顕著な実績があるようには見えない。たとえば、日本民俗学や文化人類学においては、海外の研究者による日本研究と国内の研究者による日本研究は、積極的な交流がなく、別の世界でなりたってきたという。

 日本研究の成果を海外に発信していくことが、これまで以上に必要とされていると、イタリアに行って実感した。すでに日文研では、優れた研究の翻訳が行われ、数多くの国際シンポジウムやワークショップが開催されてきたことを、赴任して知った。

 わたし自身も、研究の蓄積を踏まえ、海外への発信と交流を意識しながら、地道に研究を積み重ねていきたいと思う。

 

安井眞奈美教授 紹介ページ
http://research.nichibun.ac.jp/ja/researcher/staff/s485/index.html