研究部からのひとこと

2017.11.15 手塚治虫『グリンゴ』と歴史マンガ(細川周平教授)

 さる10月28日、日文研の一般公開に合わせて「歴史マンガをどう読むか?」というシンポジウムを講堂で開き、手塚治虫『ブッダ』(荒木浩教授)、楠勝平『おせん』(吉村和真客員教授)、メキシコの歴史読み物イストリエッタ(エルナンデス・アルバロ研究員)に混じって、手塚治虫『グリンゴ』について話した。マンガとは思春期の後はたまに人気作が遅れて回ってくるだけでほとんど何も知らず、まったくおこがましい。だがこの手塚の遺作が、南米某国の駐在員が日本戦勝を信じる勝ち組の離れ村に家族ともども迷い込むという冒険を語るので、ブラジルに実在したこの勝ち組の文芸や娯楽についてかつて調べてきたいきさつから参加した。奉納相撲大会が始まるところで手塚が亡くなったのが惜しいというようなありきたりの発言で汗顔をしのいだのだが、吉村さんから主人公側の手塚タッチの顔と、勝ち組連中のアメリカマンガ風の東洋人ステレオタイプの顔では違うでしょうと発言があり、作品の驚くような見方を教わった。『おせん』についても同じく顔の描写からうっかり見落としていた微細な人間関係を種明かししてくれた。「グリンゴ」は中南米で白人、特にアメリカ合衆国人を指す俗語で、西部劇で聞いた覚えがある。なぜ手塚は(主人公のカナダ夫人以外)白人がその他大勢でしか登場しない本作にこの題名をつけたのか、日本移民がグリンゴなのか、それとも・・・と妄想が広がったところで時間切れとなった。

 

細川周平教授 紹介ページ
http://research.nichibun.ac.jp/ja/researcher/staff/s006/index.html